http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/121111/waf12111118000008-n1.htm
【衝撃事件の核心】
挙式直前の逮捕、妻は破水…
投資詐欺「受け子」の現実
2012.11.11 18:00 産経新聞
多発する詐欺事件に注意を呼び掛ける啓発チラシ
架空の金融商品購入話を
持ちかけ、多額の現金をだまし
取る詐欺事件が全国で頻発して
いる。
奈良県警は10月下旬以降、
詐欺グループで現金の受け取り役
を命じられた「受け子」と呼ばれ
るメンバーを立て続けに逮捕した。
こうした末端のメンバーは、
グループ上層部の暴力団関係者
などに指示されるがまま犯行に
加担し、真っ先に逮捕されると
いう“役回り”だ。
結婚式の2日前に逮捕され、
初公判の日に妊娠中の妻が破水…
。
家族や婚約者ら周囲の人生をも
暗転させた受け子たちの人間模様
が、それぞれの公判から垣間見え
た。
(山本考志)
■“劇場型”の勧誘
奈良県警は10月30日、
架空の金融商品の購入を持ちかけ、
奈良県田原本町の女性(79)
から現金600万円を詐取した
などとして、詐欺などの疑いで
住所不定、自称コンサルティング
業の男(27)=同罪で公判中=
と、千葉県市原市南岩崎の無職の
男(21)ら3人を逮捕したと
発表した。
県警によると、
3人は共謀し2月以降、女性宅に
架空会社名義のダイレクトメール
(DM)を発送した。
「信託受益権」の購入を持ちかけ
た後、今度は電話で別の架空会社
社員を名乗り
「購入する権利を譲ってほしい」
と勧誘。
女性が承諾すると、再度、
DMの送付元の会社をかたり
「名義貸しは違法」
と追い込んだ上、女性宅で現金
600万円をだまし取るなどし
たという。
信託受益権とは、不動産などの
信託で発生した利益を受け取る
権利だ。
詐欺グループは、DMの送付元
の会社を東京都内の
「日本明治開発」
と名乗り、架空の環境事業や社長
の写真を掲載したパンフレットも
送りつけていた。
全国各地でも、同じ会社名で
数件、このDMが送られているの
が確認されている。
■監視される「受け子」
自称コンサルティング業の男の
公判が開かれた奈良地裁の法廷
では、犯行に至る経緯が明らかに
なった。
男は高校中退後、職を転々と
する中、知人からの紹介で詐欺
グループのメンバーと接触した。
今回の事件前には別の詐欺事件
で、ATM(現金自動預払機)
から現金を引き出す際の見張り役
もしていた。
3月初旬、暴力団関係者を名乗
る人物から、受け子役を命じられ
た。
経済苦から一旦は引き受けるも、
犯行前日にやめようとしたが
「やめるなら損害を弁償しろ」
などと脅された。
結局、抜けることができなかっ
た男は行き先を知らされないまま、
関東から新幹線で関西方面に
移動。
道中では、タトゥー(入れ墨)
をした前述の無職の男が監視役の
ような形で同行し、被害者との
受け答えを想定した受け子用の
マニュアルを読まされた。
男は奈良県に到着すると、女性
宅でマニュアル通り現金600万
円を受け取った。
現金はそのまま詐欺グループに
渡したが、縁を絶つため報酬は
受け取らなかったという。
被害女性はさらに300万円を
要求され、長年積み立ててきた
定期預金を解約しようとした
ところで、金融機関の職員が被害
を察知。
女性は職員に付き添われて県警
に相談した。
県警はここで
「だまされたふり」をしてもらう
作戦を展開し、現金を受け取りに
きた住所不定、無職の男(20)
を3月に逮捕。
さらに捜査を進め、8月末に
千葉県内のウイークリーマンショ
ンで、自称コンサルティング業の
男を逮捕した。
公判では、男の逮捕現場に居合
わせた交際中の女性が証人として
出廷。
被告人席に座る男を前に、弁護
側の尋問に
「自立して罪を償い社会に貢献し
てほしい」
と発言し、釈放後も交際を続けて
見守る意向を明らかにした。
■狂う人生、地道でいいから…
詐欺グループの受け子たちは、
金銭欲などに駆られて犯行に加担
した末、真っ先に逮捕され、自身
だけでなく家族や周囲の人たちの
人生を狂わせるケースも多い。
奈良県警が同様の詐欺事件で
逮捕した東京都足立区の飲食店員
の男(32)も、その1人だ。
男は7月上旬、奈良県桜井市内
の60代女性と岐阜市内の70代
女性に架空の株式購入話を持ち
かけ、現金計約940万円をだま
し取った詐欺事件で受け子を担当
。
県警と被害者の
「だまされたふり作戦」で
8月3日に逮捕された。
10月19日に奈良地裁で開か
れた初公判では、男の父親が証言
台に立ち、逮捕が男の結婚式の2
日前だったことを告白した。
突然連絡が取れなくなり、
「事故に遭ったのでは…」
と心配していたところ、まさかの
逮捕を知らされたという。
父親は、男の妻が妊娠中で、
逮捕後は収入がなく、生活保護を
受給して暮らしており、初公判
当日の早朝に破水して入院した
ことも明らかにした。
さらに、妻の現在の心境を語る
言葉も、父親の口から伝えられた
。
「地道なものでいいから、きちっ
とした家族生活が送りたい。
人間関係を清算して普通の企業に
就職し、社会経験を積んでほしい」
■なかなか見えない中枢
捜査関係者によると、詐欺グル
ープにはこうした受け子のほかに
も、被害者に電話をかける
「掛け子」や、振り込ませた現金
をATMから引き出す「出し子」
などがいる。
しかし、こうした末端メンバー
を逮捕しても、ほとんどがグルー
プの全容を知らされていないため、
元締めまで到達しないという。
また、詐欺に使う銀行口座や
携帯電話などを用意する組織も
それぞれ独立しており、被害者の
着信履歴や振込先の口座からグル
ープの中枢部に捜査の手を伸ばす
ことも難しいという。
こうした状況の中で、被害を
把握した各都道府県警は情報交換
を重ね、詐欺グループが潜伏する
アジトを突き止めて捜査員を派遣
。
24時間態勢で監視し、容疑を
固めていく地道な捜査を続けて
いる。
捜査関係者は
「詐欺グループのメンバーを立件
するため証拠をそろえるには長い
時間を要する。被害が多発する中
で捜査が追いついていないのが
現状だ」と悔しさをにじませる。
それでも
「被害者には高齢者が多く、生涯
かけて積み立てた虎の子の財産が
根こそぎ奪われている」とし、
「卑劣な犯行は絶対に許さない」
と厳しい姿勢で捜査に臨んで
いる。
現代の詐欺グループは、組織化
と分業化が進んでるだけに、
捜査は、大変なのは、良く判り
ます。
騙し取られたお金は、暴力団の
資金に成ってる場合も多い様で
すから、警察には、地道な捜査
をお願いしたいものです。
ただ、高齢者を狙うだけに、
押さえ込むのも難しいでしょう
ね。
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【衝撃事件の核心】 挙式直前の逮捕、妻は破水…投資詐欺「受け子」の現実。
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