http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130803/waf13080312000015-n1.htm
【衝撃事件の核心】
限界集落“現代の八つ墓村”異様な光景…マネキン、防犯カメラ、放火ほのめかす貼り紙、浮いた容疑者の周辺
2013.8.3 12:00 産経新聞
山に囲まれたのどかな集落で起きた
5人連続殺人事件。逮捕された
保見光成容疑者宅前には裸のマネキン
が置かれ、集落に似つかわしくない防犯
カメラも設置されていた
山口県周南市
緑深い山間(やまあい)の集落は、
一夜を境に殺戮(さつりく)の舞台と化した。
参院選が投開票を迎えた7月21日から翌日に
かけて、山口県周南(しゅうなん)市金峰
(みたけ)の集落で、住民の男女5人の他殺体が
見つかった。
突如の惨劇は、集落のたたずまいも相まって、
さながら映画化もされた小説「八つ墓村」を想起
させた。
事件発生から6日目、山口県警は殺人などの
容疑で同じ集落の保見光成(ほみ・こうせい)
容疑者(63)を逮捕。
潜んでいたのは、集落からそう遠くない山の中
だった。
集落は、住民の過半数を高齢者が占める
「限界集落」だったが、保見容疑者の自宅だけは、
そこに似つかわしくない防犯カメラ、上半身だけ
のマネキン、不審な貼り紙…と、風景に溶け込ま
ない異様さを漂わせていた。
(岡野祐己)
■14人だけが住む集落
「金峰で放火殺人事件が起きたんでしょう。あん
な山奥で人が殺されるなんて信じられないねえ」
JR徳山駅から北東に約16キロ。
タクシーの男性運転手はこう言って、現場に車
を走らせた。
背の低いビルや数軒のコンビニなどが立ち並ぶ
市街地はすぐに通り過ぎ、10分ほどで車道が山
に囲まれた。
車1台がやっと通れるほどの曲がりくねった
山道を緑の森を抜けるように進む。
運転手は
「こんなところ、地元に住む私でも来たことがな
い」。
そこが現場だということは、警察が張った黄色
い規制線と、真っ黒に焼け落ちた民家の残骸で
わかった。
放火された2軒目の民家もすぐそばにあった。
事件が起きた金峰の郷(ごう)集落は、8世帯
14人が住む「限界集落」だ。
10人以上が65歳以上の高齢者。
民家は約600メートルの道沿いにぽつぽつと
点在する。周囲を標高750メートルの山々が囲
み、夏には蛍が飛び交う清流が流れる。
事件さえなければ「日本の原風景」に近かった
のかもしれない。
携帯電話は一切通じない。
かつては130人ほどの児童がいたという小学
校は、平成15年に廃校となり、現在は公民館に
なっていた。
■「浮いた」容疑者宅
そんな集落が突然、全国に知れ渡った。
最初に事件が起きたのは21日午後9時ごろ。
貞森誠さん(71)宅で火災が起き、焼け跡から
貞森さんと妻の喜代子さん(72)の遺体が発見
された。
ほぼ同時に約80メートル離れた山本ミヤ子さん
(79)宅でも火災が発生、山本さんの遺体が見つ
かった。
さらに翌22日正午ごろには、2軒の民家でそれ
ぞれ、河村聡子さん(73)と石村文人さん(80)
の遺体が発見された。
5人はいずれも頭を複数回殴られ、ほぼ即死だっ
た。
保見容疑者は逮捕後、「木の棒で殴った」と話し
ているという。
被害者5人のうち4人と交流が深かったという
建設業の男性(79)は
「みんな恨まれるような人ではなかったのに、なぜ
こんなことに」と唇をかんだ。
県警は同日、
自宅の窓に「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」と
放火をほのめかすような紙を貼っていたり、周囲と
のトラブルがあったことなどから、山本さん宅の隣
に住む保見容疑者を重要参考人とし、付近の山中を
捜索した。
保見容疑者宅には不審な貼り紙のほか、玄関先に
上半身だけのマネキンや防犯カメラもあり、集落で
1軒だけが「浮いて」いた。
■孤立、集落の“火種”に
なぜ、事件発覚直後に保見容疑者の存在がクロー
ズアップされたのか。
周辺住民らによると、金峰出身の保見容疑者は
約15年前、母親の死をきっかけに、当時暮らして
いた川崎市から父親がいるこの集落に帰郷した。
父親の死後は、あいさつを交わさず回覧板も受け
取らなくなったといい、集落での孤立が深まったと
いう。
孤立のきっかけは何だったのか。
保見容疑者は町おこしを提案したところ住民に
反対されたり、飼い犬が「臭い」と苦情を言われた
りしていたとの情報もある。
平成23年元日には、
周南署に「周辺から悪口を言われている」と相談し
ていたことも判明。
そこからは自分だけが集落の中で阻害されている
といった感情を抱いていたことがうかがえるが、
それより前から、保見容疑者が集落の“火種”に
なっていたというエピソードも聞こえてくる。
犠牲になった河村聡子さんと夫は、10年ほど前
から何者かに襲われるかもしれないと怯え、就寝時
は非常時に備えて棒を傍らに置き、夫婦が1階と
2階に分かれて寝ていた。
さらには、家を空けて放火されないよう、旅行
さえも夫婦別々に行っていたという。
こうした用心は、15年6月に河村さん宅の倉庫
で不審火があったためだ。
ただ、放火犯は特定されていない。
今回の事件当日、夫は知人と旅行で不在だった。
知人は夫婦を誘ったが、2人で家を空けて放火
されることを恐れ、河村さんが1人残ったという。
旅先で事件を知った夫は知人に、保見容疑者が
以前、周辺住民に「ぶち殺すぞ」と怒鳴っていた
ことを明かしていた。
■「八つ墓村」ではない現実の悲劇
保見容疑者は火災が起きる直前の21日昼、
同じ集落の住人と会話したのが確認されていたが、
その後は姿を消した。
県警は22日以降、細い山道を走るオートバイ
や警察犬も投入し、川ではウエットスーツ姿の
捜査員が遺留品などの捜索にあたった。
保見容疑者宅には2台の車が止められたままで、
自転車に乗った形跡や、付近で盗難車の届け出も
なかったことから、県警は徒歩で集落を出たと
みていた。
また、保見容疑者はかつて左官職人だったこと
から、捜査関係者は
「山の中にでも秘密の基地を作っているのかも
しれない」と、真顔で話してもいた。
結局、26日午前、住民らが避難する公民館の
北約1キロの山中で、上下とも下着姿、足ははだ
しで発見された。
凶器や所持品はなく、事件発生からの5日間、
いかに山中で生き延び、食料はどう確保したのか
。
周南署幹部によると、亡くなった河村さんの夫
は衰弱し、妻の死を受け止められない状態という
。
山間の集落で起きた大量殺人は、
平成の「八つ墓村」のようにも語られるが、映画、
ドラマと何度も映像化された横溝正史の推理小説
「八つ墓村」は、昭和13年に岡山県で起きた
「津山30人殺し」も元にしているとされる。
若者が2つの集落の30人を日本刀や猟銃など
で次々に殺害。
自身も自殺した前代未聞の事件だ。
映画「八つ墓村」(昭和52年)は、当時の
CMで流れた「祟(たた)りじゃ~」というフレ
ーズが、子供から大人まで流行した。
時代は変わり、
小説や映画ではなく、現実に5人の命が狭い集落
の中で奪われた。
現代に起きた悲劇。
その真相がわかる日は来るのだろうか。
横溝正史のミステリーは、土地に纏わる伝奇的な
作品が多い様に思います。
元々、江戸川乱歩氏の担当編集者から、作家に
転身され、その作品は、乱歩さんとは、多いに
違ってます。
伝奇的な色彩が、強い為、日本人の心には、心の
底に届く作品が多いのが、横溝ミステリーだと、
私は思ってます。
昔から、「事実は、小説より奇なり」と言う言葉
が、有ります。
現代の日本で、この様な事件が、起きたのには、
驚きでした。
その動機が、語られる日を待ちたいです。
【衝撃事件の核心】
限界集落“現代の八つ墓村”異様な光景…マネキン、防犯カメラ、放火ほのめかす貼り紙、浮いた容疑者の周辺
2013.8.3 12:00 産経新聞

山に囲まれたのどかな集落で起きた
5人連続殺人事件。逮捕された
保見光成容疑者宅前には裸のマネキン
が置かれ、集落に似つかわしくない防犯
カメラも設置されていた
山口県周南市




緑深い山間(やまあい)の集落は、
一夜を境に殺戮(さつりく)の舞台と化した。
参院選が投開票を迎えた7月21日から翌日に
かけて、山口県周南(しゅうなん)市金峰
(みたけ)の集落で、住民の男女5人の他殺体が
見つかった。
突如の惨劇は、集落のたたずまいも相まって、
さながら映画化もされた小説「八つ墓村」を想起
させた。
事件発生から6日目、山口県警は殺人などの
容疑で同じ集落の保見光成(ほみ・こうせい)
容疑者(63)を逮捕。
潜んでいたのは、集落からそう遠くない山の中
だった。
集落は、住民の過半数を高齢者が占める
「限界集落」だったが、保見容疑者の自宅だけは、
そこに似つかわしくない防犯カメラ、上半身だけ
のマネキン、不審な貼り紙…と、風景に溶け込ま
ない異様さを漂わせていた。
(岡野祐己)
■14人だけが住む集落
「金峰で放火殺人事件が起きたんでしょう。あん
な山奥で人が殺されるなんて信じられないねえ」
JR徳山駅から北東に約16キロ。
タクシーの男性運転手はこう言って、現場に車
を走らせた。
背の低いビルや数軒のコンビニなどが立ち並ぶ
市街地はすぐに通り過ぎ、10分ほどで車道が山
に囲まれた。
車1台がやっと通れるほどの曲がりくねった
山道を緑の森を抜けるように進む。
運転手は
「こんなところ、地元に住む私でも来たことがな
い」。
そこが現場だということは、警察が張った黄色
い規制線と、真っ黒に焼け落ちた民家の残骸で
わかった。
放火された2軒目の民家もすぐそばにあった。
事件が起きた金峰の郷(ごう)集落は、8世帯
14人が住む「限界集落」だ。
10人以上が65歳以上の高齢者。
民家は約600メートルの道沿いにぽつぽつと
点在する。周囲を標高750メートルの山々が囲
み、夏には蛍が飛び交う清流が流れる。
事件さえなければ「日本の原風景」に近かった
のかもしれない。
携帯電話は一切通じない。
かつては130人ほどの児童がいたという小学
校は、平成15年に廃校となり、現在は公民館に
なっていた。
■「浮いた」容疑者宅
そんな集落が突然、全国に知れ渡った。
最初に事件が起きたのは21日午後9時ごろ。
貞森誠さん(71)宅で火災が起き、焼け跡から
貞森さんと妻の喜代子さん(72)の遺体が発見
された。
ほぼ同時に約80メートル離れた山本ミヤ子さん
(79)宅でも火災が発生、山本さんの遺体が見つ
かった。
さらに翌22日正午ごろには、2軒の民家でそれ
ぞれ、河村聡子さん(73)と石村文人さん(80)
の遺体が発見された。
5人はいずれも頭を複数回殴られ、ほぼ即死だっ
た。
保見容疑者は逮捕後、「木の棒で殴った」と話し
ているという。
被害者5人のうち4人と交流が深かったという
建設業の男性(79)は
「みんな恨まれるような人ではなかったのに、なぜ
こんなことに」と唇をかんだ。
県警は同日、
自宅の窓に「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」と
放火をほのめかすような紙を貼っていたり、周囲と
のトラブルがあったことなどから、山本さん宅の隣
に住む保見容疑者を重要参考人とし、付近の山中を
捜索した。
保見容疑者宅には不審な貼り紙のほか、玄関先に
上半身だけのマネキンや防犯カメラもあり、集落で
1軒だけが「浮いて」いた。
■孤立、集落の“火種”に
なぜ、事件発覚直後に保見容疑者の存在がクロー
ズアップされたのか。
周辺住民らによると、金峰出身の保見容疑者は
約15年前、母親の死をきっかけに、当時暮らして
いた川崎市から父親がいるこの集落に帰郷した。
父親の死後は、あいさつを交わさず回覧板も受け
取らなくなったといい、集落での孤立が深まったと
いう。
孤立のきっかけは何だったのか。
保見容疑者は町おこしを提案したところ住民に
反対されたり、飼い犬が「臭い」と苦情を言われた
りしていたとの情報もある。
平成23年元日には、
周南署に「周辺から悪口を言われている」と相談し
ていたことも判明。
そこからは自分だけが集落の中で阻害されている
といった感情を抱いていたことがうかがえるが、
それより前から、保見容疑者が集落の“火種”に
なっていたというエピソードも聞こえてくる。
犠牲になった河村聡子さんと夫は、10年ほど前
から何者かに襲われるかもしれないと怯え、就寝時
は非常時に備えて棒を傍らに置き、夫婦が1階と
2階に分かれて寝ていた。
さらには、家を空けて放火されないよう、旅行
さえも夫婦別々に行っていたという。
こうした用心は、15年6月に河村さん宅の倉庫
で不審火があったためだ。
ただ、放火犯は特定されていない。
今回の事件当日、夫は知人と旅行で不在だった。
知人は夫婦を誘ったが、2人で家を空けて放火
されることを恐れ、河村さんが1人残ったという。
旅先で事件を知った夫は知人に、保見容疑者が
以前、周辺住民に「ぶち殺すぞ」と怒鳴っていた
ことを明かしていた。
■「八つ墓村」ではない現実の悲劇
保見容疑者は火災が起きる直前の21日昼、
同じ集落の住人と会話したのが確認されていたが、
その後は姿を消した。
県警は22日以降、細い山道を走るオートバイ
や警察犬も投入し、川ではウエットスーツ姿の
捜査員が遺留品などの捜索にあたった。
保見容疑者宅には2台の車が止められたままで、
自転車に乗った形跡や、付近で盗難車の届け出も
なかったことから、県警は徒歩で集落を出たと
みていた。
また、保見容疑者はかつて左官職人だったこと
から、捜査関係者は
「山の中にでも秘密の基地を作っているのかも
しれない」と、真顔で話してもいた。
結局、26日午前、住民らが避難する公民館の
北約1キロの山中で、上下とも下着姿、足ははだ
しで発見された。
凶器や所持品はなく、事件発生からの5日間、
いかに山中で生き延び、食料はどう確保したのか
。
周南署幹部によると、亡くなった河村さんの夫
は衰弱し、妻の死を受け止められない状態という
。
山間の集落で起きた大量殺人は、
平成の「八つ墓村」のようにも語られるが、映画、
ドラマと何度も映像化された横溝正史の推理小説
「八つ墓村」は、昭和13年に岡山県で起きた
「津山30人殺し」も元にしているとされる。
若者が2つの集落の30人を日本刀や猟銃など
で次々に殺害。
自身も自殺した前代未聞の事件だ。
映画「八つ墓村」(昭和52年)は、当時の
CMで流れた「祟(たた)りじゃ~」というフレ
ーズが、子供から大人まで流行した。
時代は変わり、
小説や映画ではなく、現実に5人の命が狭い集落
の中で奪われた。
現代に起きた悲劇。
その真相がわかる日は来るのだろうか。
横溝正史のミステリーは、土地に纏わる伝奇的な
作品が多い様に思います。
元々、江戸川乱歩氏の担当編集者から、作家に
転身され、その作品は、乱歩さんとは、多いに
違ってます。
伝奇的な色彩が、強い為、日本人の心には、心の
底に届く作品が多いのが、横溝ミステリーだと、
私は思ってます。
昔から、「事実は、小説より奇なり」と言う言葉
が、有ります。
現代の日本で、この様な事件が、起きたのには、
驚きでした。
その動機が、語られる日を待ちたいです。