http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130120/waf13012012000004-n1.htm
【衝撃事件の核心】
刑事もやられた 5秒の早業…
63歳抱きつき師の〝スリ特訓人生30年〟
2013.1.20 12:00 産経新聞
この道30年の凄腕スリの男が捕まった
ミナミの繁華街にあるビル付近
大阪市中央区東心斎橋
わずか5秒の早業で財布を抜き
取り、自らを
「抱きつきスリのプロ」
と豪語した男が昨年11月、
大阪府警に窃盗容疑で現行犯逮捕
された。
捜査員の間でも凄腕スリ師とし
て知られていた志津田(しつた)
邦博被告(63)=同罪で起訴。
酔客を狙い30年にわたって
犯行を重ねたその技術は、
スリ専門の捜査員でさえ
「全く気付かなかった」
とうなる。
仕事もせず、生活保護も受けずに
スリ一本で生計をたてていたと
いう志津田被告が腕を磨くために
重ねていた特訓とは-。
■酔客に抱きつき5秒
昨年11月30日金曜日の深夜。
忘年会シーズンに入った大阪
・ミナミの繁華街は多くの人で
にぎわっていた。
その雑踏の中、スーツにネクタ
イ姿で大阪市中央区東心斎橋に
ある雑居ビルの前をうろつく
志津田被告の姿があった。
酔っ払いが1人でエレベーター
に乗るのを狙うためだ。
しばらくすると“獲物”がやっ
てきた。
足取りがおぼつかない男性会社
員(45)がビルのエレベーター
に乗り込もうとした瞬間、
志津田被告はすかさず後を追い、
一緒にエレベーターに滑り込んだ
。
「うちのスナックどうですか。
上の階にあるんですよ。行きませ
んか」
エレベーター内でスナックの客
引きを装って会社員に話しかけた
志津田被告はなれなれしく肩に
左手を回した。
その瞬間、右手にはズボンの
ポケットから抜き取った財布が握
られていた。
この間、わずか5秒。
酔っ払っている会社員には、
強引な客引きとしか映らなかった
ようで、財布をすられたことは
まったく気付いていない。
まさに秒殺の犯行を終えた
志津田被告だったが、エレベータ
ーが2階に到着した瞬間、府警の
捜査員に取り押さえられた。
実はこの捜査員、周辺でスリの
被害が多発していたため、
警戒していたスリ捜査専門の警察
官だった。
酔った客の後をつけたり、ビル
の前をうろついたりと挙動不審な
動きをしていた志津田被告の行動
が目に留まり、後をつけた末の
「お手柄」だった。
志津田被告は約30年前から
全国各地の繁華街で抱きつきスリ
を繰り返してきたプロ中のプロだ。
今回の逮捕は8回目になるが、
府警の捜査員に
「警察官に現行犯逮捕される以外
はプライドが許さない」
と豪語したという。
その言葉通り、志津田被告の
スリ技術は圧巻だった。
逮捕後の実況見分で、被害者役
の警察官ですら志津田被告から
財布を取られたことに全く気づか
なかったという。
捜査幹部は
「肩を触られたり、顔を近づけら
れたりするとそちらに意識が向い
てしまうようだ。被害者役の捜査
員は『あれ、いつ取ったの?』と
驚いたほどだった…」
とその凄腕さに舌を巻いた。
■マネキンに鈴
志津田被告が府警の調べに供述
した内容によると、スリを始めた
きっかけは偶然の出来事だった。
約30年前のある夜、路上を歩
いていると、泥酔して道に寝て
いる男性からスリ犯が財布を抜き
取るのをたまたま目撃した。
「簡単にできるんだな…」。
こう思った志津田被告は、
見よう見まねでスリを始めたが、
路上で寝ている人から財布を取っ
たとしても、わずかな金額しか入
っていない。
もっと大金がほしいと思うよう
になり、目をつけたのが、繁華街
でスナックなどに向かう酔っ払い
客だ。
酔っ払いとはいえ、どうやった
ら、すばやく、そしてうまく盗む
ことができるか。
思いついたのが、スリの技術を
磨く特訓だった。
背広を着せたマネキンに鈴を
つけ、音をたてずに財布を盗むと
いう練習を積み重ねたという。
こうして編み出した手口が抱き
つきすりだった。
街に入ると、まず3日間は何も
せずにビルや路地を見てまわり、
防犯カメラの位置や人の流れを
チェック。
スナックがある雑居ビルなど
犯行に最適な場所と時間を研究
する。
その後は、ターゲットである
40~50代の酔っ払った男性が
来るのを待ち、エレベーターに
1人で乗り込もうとするところを
すばやく同乗。
逃げやすいように、すぐに
「2階」のボタンを押し、1階
から2階にあがるわずか数秒の間
に客引きを装って抱きつき、瞬時
に財布を盗むという。
犯行を繰り返してきた都市は
札幌、仙台、広島、福岡、大阪
など。
最近の主な拠点は大阪で、ネッ
トカフェをねぐらにし、盗んだ金
は生活費やパチンコ代にあてて
いたという。
過去には犯行のため、神戸から
広島まで新幹線に乗って移動した
ことも。
捜査関係者は
「仕事や生活保護も受けずにネッ
トカフェで生活していたことを考
えると、スリで相当稼いでいたの
ではないか」と推測している。
■高齢化で激減するスリ犯
捜査関係者の話では、
志津田被告のような常習スリ犯は
全国で千人以上にのぼるというが、
そのほとんどが高齢者だという。
府警によると、
府内で逮捕するスリ犯は今や70
~80代がほとんど。
昨年10月、百貨店で買い物客
のかばんから財布を盗んだとして
窃盗容疑で逮捕されたのも80歳
と72歳の高齢姉妹だった。
姉はスリ歴60年、妹は50年
の筋金入り。
これまでに大阪や京都、愛知
などの百貨店を中心にスリを繰り
返していた。
長年培ってきた技術で犯行を
重ねるスリ犯は、指先でうまく
財布を抜き取るなど高度な技術が
要求される。
捜査関係者は
「昔はベテランのスリ師が若者に
スリの手口を教えていた。しかし、
スリは気付かれたらすぐに捕まっ
てしまうためか、最近は技術の
継承はみられず、若者はひったく
りに走るケースが多い」
と指摘する。
実際、スリ犯の高齢化もあって
か、スリ被害の認知件数は年々
減少傾向にある。
警察庁によると、ピークだった
平成5年は3万件を超えていたが、
その後、徐々に減少、23年には
5515件にまで激減した。
府内でも同様の傾向が見られ、
20年に1308件だったが、
昨年は788件だった。
だが、油断は禁物だ。
捜査関係者は
「いつ取られているのか分からな
い。これがスリの怖さだ」
と警鐘を鳴らす。
特に抱きつきスリの場合、酔っ
ていることもあり、盗まれたこと
にすら気付かず、盗難届ではなく
遺失届を出している被害者も多い
という。
「芸は、身を助ける。」と言いま
す。
一芸を磨けば、いざと言う時に
役立つものですが、この芸は、
身を滅ぼす様です。
いや、仕事もせず、生活保護も
受けて無かったのですから、身を
助けていたのかも?
スリの技を高度に磨くには、時間
が掛ります。
結果をすぐに欲しがる今の若者に
は、不向きな芸かも?知れません
ね。
スリの世界も高齢化傾向と言うの
は、これも時代の流れでしょう。
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刑事もやられた 5秒の早業…63歳抱きつき師の〝スリ特訓人生30年〟
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