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【法廷から】
世間が仰天した「あの人たち」の証言…
ドラマ尽くしの東京地裁、今年の法廷を振り返る
2012.12.30 07:00 産経新聞
“剛腕”政治家、金メダリスト、
オウム真理教元信者-。
東京地裁では平成24年も、
さまざまな境遇で社会の注目を集めた
著名人らが、被告として証言台に立っ
た。
彼らが語った法廷ならではの
「本音」の数々を振り返る。
(時吉達也、年齢、呼称は当時)
■「私の関心は『天下国家』」
年明け早々の1月10、11日に
被告人質問が行われたのは、
資金管理団体「陸山会」の土地購入を
めぐり、政治資金規正法違反
(虚偽記載)罪で強制起訴された民主
党元代表、小沢一郎被告(69)=
1、2審の無罪判決が確定。
検察官役の指定弁護士は、秘書の
会計業務について、一切監督行為を
行っていなかったと主張する小沢氏を
追及した。
指定弁護士
「政治資金規正法の趣旨は理解してい
るか」
被告
「直接的に法律の制定に関与していな
いが、できるだけオープンに、と主張
した」
指定弁護士
「(会計責任者の秘書が)政治資金
収支報告書の作成に関与しなくてもよい、
としたのか」
被告
「実務担当の秘書が法の趣旨にのっとっ
て経理をやればいいと思っていた。
会計事務は普通の読み書きと計算ができ
れば可能だ」
指定弁護士
「ふさわしいかかわり方だったか」
被告
「収支報告書が大事じゃないとは言わな
いが、実務は秘書に任せて十分やれる。
私の関心事は天下国家の話で、それに
邁進(まいしん)する日常を送っている
つもりであります」
■「生きる尊さ、自分の大切さ。すべて
幻だった」
17歳の時に面識のない4歳の男児を
ハンマーで殴り重傷を負わせた少年が、
6年を経て昨年8月、東京・渋谷のライ
ブハウスにガソリンをまき、無差別殺人
を図った事件。
殺人予備などの罪に問われた島野悟志
被告(24)=1審懲役4年、判決確定
=の心の闇が、今年2月の初公判で浮き
彫りになった。
被告
「当時の大臣が死刑執行命令を出して
いなかった。殺人事件を起こせばシステ
ムを変えられる。一種の行政テロで、
自分もすぐに死刑執行してほしかった」
弁護人
「ライブハウスの経営者や搬送された人
に対してどう思う?」
被告
「この世界は不条理。運が悪ければ被害
に遭うのは仕方ない。冷たい目で見て
いる」
弁護人
「社会復帰後はどうする」
被告
「更生して真面目に生きて、何のメリッ
トがあるんだ。ばからしい。少年院時代
に感じた人生の素晴らしさ、生きる尊さ、
自分の大切さ。すべて幻を見せられた
だけだった。社会は閉鎖的でシビアで、
冷たく退屈だった」
■「父の叱責が怖かった」
東証一部上場の大企業で、東大法学部
卒の創業家御曹司がカジノにのめり込み、
子会社から約55億円を無担保で借り入
れていたことが発覚した前代未聞の不祥
事。
会社法違反(特別背任)罪に問われた
大王製紙元会長、井川意(もと)高
(たか)被告(47)=1審懲役4年、
控訴中=は7月の被告人質問で、
借り入れを加速させた経緯について問わ
れ、創業家2代目として社内で権勢を
振るった父の存在に言及した。
被告
「父に借り入れが発覚し、使途がギャン
ブルといえば激しく叱責されるため、
事実と違う説明をした。そのため借金が
一部残ってしまい、何とかギャンブルに
勝って返済しよう、と考えました」
弁護人
「カジノにはまったのは仕事の重圧が
原因ですか」
被告
「私より大変な重圧を受ける経営者は
いくらでもいる。ただ、自分も若くし
て高いポジションに就き、『創業家だか
ら』と思われたくない、という気持ちは
強くありました」
裁判官
「ギャンブルで損失を取り戻せないのは、
子供でもわかることです。あなたは本来
極めて合理的な考えを持っているのに、
そのギャップが埋められません」
被告
「大きく負けると深みにはまり、取り返
しがつかなくなりました。今考えると
馬鹿げた話だが、ツキがあれば何とか
なると思っていました」
■「菊地との今後は、ちょっと考えたい
…」
昨年の大みそか深夜、
オウム真理教元幹部、平田信(まこと)
被告=逮捕監禁などの罪で起訴=が出頭
したのを皮切りに、平田被告、元幹部の
菊地直子被告=東京都庁郵便物爆発事件
の殺人未遂幇助(ほうじょ)などの罪で
起訴=ら教団の特別手配犯3人が逮捕、
起訴された。
いずれも公判開始は来年に持ち越しと
なったが、平田、菊地両被告をそれぞれ
かくまったとして犯人蔵匿などの罪に
問われた同居人の斎藤明美(49)=
1、2審の懲役1年2月判決が確定、
高橋寛人(41)=1審懲役1年6月、
執行猶予5年が確定=両被告の公判では、
逃亡生活の一端が明らかにされた。
長らく生活を共にした同居人への愛情
を強調した両被告。
しかし、今後の生活について、
「社会復帰後はまた平田と一緒に暮らし
たい」
とはっきり述べた斎藤被告とは対照的に、
高橋被告は複雑な表情を浮かべた。
被告
「これまで(前妻との)子供に何も言わ
ず、菊地と暮らしていた。今回の事件で
迷惑をかけた子供や両親の理解なしに、
菊地と一緒に生活することはできません」
検察官
「じゃあ、別れるんですか?」
被告
「出会った当時、精神的に普通でなかっ
た自分を助けてもらった恩がある。簡単
には離れられない。ちょっと、考えさせ
てください…」
■「俺から柔道を取ったら、何も残ら
ない」
泥酔した教え子の女子柔道部員に乱暴
したとして、準強姦罪に問われたアテネ、
北京両五輪の柔道金メダリスト、
内柴正人被告(34)は11月末、
逮捕から約1年を経て被告人質問に臨ん
だ。
妻子のある身でありながら、刑事告訴
した女子部員にとどまらず、同じ日に
別の部員とも関係を持っていたことを
認めた被告。
事態発覚後の心境について、涙ながら
に話した。
被告
「この先どうなるんだろう、と…。俺
から柔道を取ったら何も残らない。死
のうと思いました」
弁護人
「実際に行動に移したんですか」
被告
「家族全員を連れて、実家に帰りました。
家族が寝静まった後で、死のう、気持ち
を決めて家を出ようと。その時、突然
妻から声をかけられたんです。
『死ぬなよ』と。それで引き留められま
した」
■震災、愛憎、ネット犯罪…
こうした著名事件以外の法廷でも、
それぞれの事情を抱えた被告が「素顔」
を垣間見せた。
ストレスを口実にバーゲンセールで
窃盗行為に及んだ福島第1原発職員。
覚醒剤に手を染めた朝日新聞記者。
20年に及ぶ不倫愛の末に結ばれた妻
を殺害した元銀行員。
人気漫画家に9千通の脅迫メールを送
り続けた男-。
法廷を傍聴すると、そうした犯罪者の
多くが、自分と変わりない市井の人で
あることに気付く。
誘惑、嫉妬、心の弱さ…。
25年も法廷で展開される
「人間ドラマ」をお伝えしていきたい。
法廷は、人間ドラマの宝庫ですね。
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世間が仰天した「あの人たち」の証言… ドラマ尽くしの東京地裁、今年の法廷を振り返る。
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