http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140309/fnc14030909010000-n1.htm
【日曜経済講座】
「ビットコイン」は中国人民元の最大脅威
無国籍通貨の台頭
編集委員・田村秀男
2014.3.9 08:48 産経新聞
最大の取引所の停止で不安が広がるビットコイン
(AP)
電子空間で創造される「ビットコイン」。
その本質は史上空前の無国籍通貨である。
ビットコインは金(きん)並みの希少価値があると
思わせるうえに、保有者は身元を知られずに、安い
コストで瞬時に資産を国外に移す手段になるのだから、
自国通貨に信用が置けない国民にとってはまさに最後
のよりどころとなる。
当然、最大の攻防の場はバブル不安の中国となる。
ビットコインは2009年、「サトシ・ナカモト」
と名乗る人物のインターネット論文の賛同者によって
開発され、10年7月からインターネット上で各国
通貨との取引が始まった。
ビットコインの入手(「採掘」と呼ばれる)は複数
のコンピューターを駆使してきわめて複雑で高度な
数式を解くことが条件となる。
総量は限られ、採掘者が多くなればなるほど、入手
量(供給)は少なくなる。
利用者(需要)が増えるに従って相場が上昇する
仕掛けだ。
最近ではビットコイン専用の現金自動預払機(AT
M)も登場し始めた。
ビットコインでの支払いを受け付けるレストランや
商店も世界各地でぼつぼつ増えている。
それでも、通貨としての使い勝手はいまいちだ。
モノを買ったり、一般の人の手から手へと流通する
には限度があるし、そのままでは国債や株式にも投資
できないし、融資も受けられない。
各国の紙幣や硬貨にないビットコインの強みはそれ
自体が国家の保証がなくても価値を持つ点だ。
ビットコインは国境を軽々と越え、アフリカの紛争
国から鎖国状態にある北朝鮮の通貨ウォンまでも交換
できるというから驚く。
昨年3月に勃発したキプロスの金融危機はビット
コインの存在価値を飛躍させた。
同国金融機関に資産を預けていたロシアの大口預金
者が一斉にビットコインに殺到し、1単位あたり60
ドル前後だった相場は3倍以上に高騰した。
そのあと、ビットコイン取引が急増してきたのが
中国である。
世界最初のATM設置場所は、多くの中国の富裕層
とその一族が永住権を取得しているカナダ、次いで
香港、さらにカナダに次ぐ移民先のオーストラリアと
いたれりつくせりだ。グラフを見よう。
13年夏から秋にかけて、中国では高利回りの理財
商品の焦げ付き不安が出始めた。
すると、中国国内にあるビットコイン取引所は大い
ににぎわうようになり、世界のビットコイン取引の
3分の1を占める最大の市場になった。
人民元を売ってビットコインを買い、資産を第三国
に移す。
ビットコイン相場はみるみるうちに急上昇し、2カ
月間で10倍だ。
中国でのビットコイン熱は単なる富の逃避では済ま
されない。
何しろ、中国への投機マネー(熱銭)の出入りの
規模が大きい。
不動産相場が高騰していた2011年秋には年間
ベースで3千億ドルの熱銭が外部から流入し、不動産
価格が下落に転じた翌年には同2千億ドル以上の資金
が国外に流出した。
厳しい政府の資本流出入規制をものともせずに熱銭
を動かせるのは共産党幹部ら既得権者以外になく、
いびつな中国の金融構造は変えようがない。
理財商品には熱銭が大きくかかわっているうえに、
中国国内の預金者が投資している。
理財商品で調達された資金の多くは不動産開発に投じ
られている。
不動産バブルが崩壊すれば3兆ドル規模の不良債権が
発生しかねない。
その不安からビットコインが買われ始めたわけで、
ビットコイン熱が高まれば高まるほど、人民元資産が売
られて、バブル崩壊を加速しかねない。
危機感を募らせた中国人民銀行はそこで12月5日、
「人民元の法定通貨としての地位を損なうのを防ぐ」
として、金融機関に対しビットコインを使った金融商品
や決済サービスの提供の禁止を発表した。
金融機関の関与を封じれば、大口の資金逃避は防げる
と判断したのだ。
このショックでビットコイン相場は暴落したが、今年
1月に入ると相場は反転した。
理財商品の焦げ付き不安が再燃したのだ。そこで中国
政府は非公式に介入して理財商品を救済したが、モグラ
たたきに近い。
2月に入ると、
大手のビットコイン取引所「マウントゴックス」
(東京・渋谷)がハッカーによる攻撃を受けて払い戻し
停止に追い込まれ、世界のビットコイン愛好者が衝撃を
受けた。
が、それにもめげず香港では2月末にビットコインの
世界初の対面型販売所がオープンした。
ビットコイン相場はロシア軍のウクライナ介入を機に、
持ち直しつつある。
中国当局は次にはどんな手を打つのだろうか。
持たざる者である私には、関係の無い話ですが、持てる
者には、苦々しい話しでしょう。
持ち直した。との事ですが、今後、どの様な局面に入る
のか?判りません。
取引所が、次々に閉鎖されるかも知れませんしね。
ともあれ、通貨とは、信用の上に、その価値は成り立っ
てる訳で。
無国籍が、強みとは、言われても、その半面も存在しま
す。
そう、無国籍が、弱みと言う。
国籍がはっきりしていれば、その国が、保障してくれま
すが、無国籍と言う事は、その後ろ盾も無いのですから。
一瞬にして、大金が、消えてしまう可能性も有り、日本
では、それが、現実となりました。
今後、どうなって行くのでしょう?
まあ、お金持ちの皆さんの話しですから、持たざる者が
心配する事も無いのですが。
経済とは、回り回って、貧乏人にも影響を及ぼす場合が
有るので、それが、心配と言えば、心配ですかね。
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「ビットコイン」は中国人民元の最大脅威。無国籍通貨の台頭。編集委員・田村秀男
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