http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130426/waf13042608300005-n1.htm
【衝撃事件の核心】
鼻折られ、血まみれでも連続猥褻犯を取り押さえた
22歳スリム女性巡査が恥じる“過去”
2013.4.26 08:30 産経新聞
警察の〝強さ〟を体現したのは女性警察官
だった
弱者を守り、悪者を見逃さない。
そんな「強い警察官」のイメージを守った
のは、身長155センチで細身、
弱冠22歳の女性巡査だった。
2月、愛知県警の女性巡査が鼻骨を折られ、
血だらけになりながらも連続強制わいせつ
事件の容疑者の男を取り押さえた。
危険を顧みない勇気ある行動は4月に公表
され、インターネット上でも大きな反響を呼
んだ。
8年前には、バットを振り回す男から
“敵前逃亡”した警察官の映像が流され、
警察官のイメージは地に墜ちた。
さらに、昨年は全国で懲戒免職処分になっ
た警察官が62人に上り、過去最悪を更新。
採用時に「正義感」や「熱意」といった
資質を見極める選考基準を設ける警察も相次
いでいる。
1人の女性警察官による執念の逮捕劇の陰
で、警察官のあるべき姿が問われている。
■血まみれの格闘
2月22日夜、愛知県半田市で「大捕物」
があった。
愛知県警半田署員がJR亀崎駅周辺で
十数件相次いでいた強制わいせつ事件を同僚
3人と警戒中のことだった。
交番勤務の巡査は制服の上にジャンパーを
着込み、1人で行動していたが、午後8時
ごろ、駅の近くで女性の後ろをつける若い男
を見つけた。
歩くスピードが異常に遅い。
これまでの目撃情報では、犯人は
「中年の男」。
特徴は少し違ったが、20メートル後方
から尾行を始めた。
男は駅から1キロ西の住宅街へ。
街灯がなくなったところで急に早足になっ
た。
数秒後、曲がり角の奥から女性の悲鳴が聞
こえた。
巡査が駆けつけると、男は走って逃げ出し
た。
巡査はすかさず男を追いかけた。
一度は男を見失ったが、500メートル離
れたアパートの陰で鉢合わせになった。
後ろから上着のフードをつかむと、男は振
り向きざまに巡査の顔を2回殴った。
巡査はよろめいたものの再び男を追い、
また2回殴られ、再び逃走された。
巡査はその衝撃で転倒。
鼻血が止まらず、制服は血だらけになった
。
だが、巡査はあきらめなかった。
懸命に立ち上がり、さらに200メートル
全力疾走して首に飛びついた。
「警察だ!待て!」。
大声で叫ぶと、男は「もう逃げません」と
観念した。
この騒ぎに気づいて出てきた近所の住人に
110番を頼んだ。
巡査は男を傷害と公務執行妨害の両容疑で
現行犯逮捕。
男は4月、半田市内の路上で女子高校生を
押し倒し、体を触ったとする強制わいせつ
容疑で再逮捕され、公表された。
男は23歳で駅の近くに住んでいた。
逮捕当時は会社員。
「女性に触りたい」
という欲望の赴くまま、帰宅途中に駅を通り
かかる女性をねらって犯行を繰り返していた。
壮絶な格闘の末にようやく捕まった男は
素直に容疑を認めているという。
これ以降、同市内で強制わいせつ事件の
発生は1件もない。
■「警察官として当然」
一連の追跡で巡査は鼻骨を折り、手術を
余儀なくされた。
幸い顔に傷は残らなかったが、全治1カ月
の重傷だった。
巡査は身長155センチで細身。
これに対し、男は身長170センチ、70
キロだ。
体格差を考慮すれば、もっとひどい目に遭
うことも考えられたが、
「追いつくことに必死で怖いと思う余裕も
なかった」という。
窮地に追い込まれても動じなかったのは、
かつての苦い経験を思い出し、警察官として
の使命感に突き動かされたからだ。
22年1月に同署に配属されて間もなく、
110番を受けて臨場した現場で職務質問を
命じられた少年に逃げられた。
数百メートル走ったところで引き返すと、
指導教官の上司に怒鳴られた。
「女の足では追いつけないとでも思ったのか
。それで市民が守れるのか」
「女だから」という言い訳は警察では通用
しない。
「どうせ相手は男だし」
と考えた自分を恥じた。警察官であれば犯人
を取り逃がすことは許されない。
追跡するときは絶対にあきらめないと心に
誓っていた。
性犯罪被害者に対する思い入れもあった。
これまで女性であるがゆえ、強制わいせつ
事件や強姦事件の被害者の調書を作る機会が
多かった。
深い心の傷を負った被害者は泣いたり体を
震わせたりしながら辛い体験を語った。
「被害状況を細かく確認することで、二重に
被害者を苦しめているのではないか」
と悩んだ。
同じ女性として被害を追体験しているよう
な気持ちにもなった。
加害者への憎しみは募るばかりだった。
手に汗握る逮捕劇は新聞などマスコミに取
り上げられ、同署には巡査をたたえるメッセ
ージが数十件届いた。
「強い正義感に感動した」
という意見が大半だが、巡査自身は
「けがをしたのは警察官として未熟だったか
ら」
と“武勇伝”とされることには戸惑いものぞ
かせる。
「目の前に同じ状況があれば、他の警察官も
私と同じ行動をとったと思う。決して特別な
ことをしたわけではなかった」。
巡査はこう言い切った。
■逃げ惑う警官たち
警察官である以上、危険と隣り合わせの
状況は避けられない。
とはいえ誰もが巡査のように勇敢なわけ
でもない。その悪例が17年2月、東京都内
で起きた事件現場での警察官の振るまいだ。
この日、港区台場の大手商社に車が突っ込
んだ。
警察官が駆けつけると、車に乗っていた男
はバットを手に車外に飛び出した。
男に追いかけられた男性警察官2人は
全速力で逃走。
結局、男は現場のパトカーを奪おうとした
窃盗未遂容疑で現行犯逮捕されたが、一部
始終をとらえたテレビ局に大々的に報じられ
た。
犯人に立ち向かう気配すらみせず、我先に
と一目散に逃げる警察官の姿に世間の反応は
厳しかった。
所属する警視庁には「職務放棄だ」と批判
が殺到。
当時の小泉純一郎首相も
「警官が逃げるとは何事か」と不快感をあら
わにした。
女性巡査とは対照的な警察官の姿は今も
インターネットの動画サイトにアップされ、
失態をさらし続けている。
■“質”問う試み続々
ただ、こうした“弱腰”の警察官はこと
さら珍しくないともされる。
厳しい訓練や規律を敬遠し、採用後1年
以内に警察を辞める人が後を絶たないとして、
大阪府警は今年度から採用試験を大幅に見直
すことを決めた。
教養試験で人文・自然科学系の出題を取り
やめて難易度を下げる一方、腕立て伏せや
腹筋の回数を点数化。
熱意と体力を重視し、犯人にひるまない
胆力を備えた人物を選考するねらいがある。
府警の1年以内の離職率は過去3年で
10~15%。
警察学校での訓練や寮生活の規律になじめ
ないことが主な理由だ。
府警幹部によると、
「人を追及するのが嫌だ」
「現場に出るのが怖い」
といった理由で辞めていく例もある。
景気低迷で公務員人気が高まり、役所の
事務系職員のような仕事と勘違いして志望
してくる人は少なくないという。
警察官が「弱くなった」だけでなく、
「悪くなった」という懸念も現実化している。
24年に懲戒処分を受けた全国の警察官や
警察職員は458人。
免職は62人、停職は128人を数え、
懲戒処分の基準が定められた12年以後、
過去最悪の数字になった。
警察官の逮捕者も93人と過去10年で
最多だった。
こうした事態を受け、兵庫県警は若手警察
官による不祥事を未然に防ごうと、採用時に
正義感や倫理観を見極める適正検査の導入を
決めた。
心理学専門の大学准教授と共同研究し、
模様の見え方で性格を分析できる検査方法を
開発中だ。
■積み重ねが誇りに
求められる職業像とのギャップを埋めよう
と試行錯誤を続ける警察組織。
だが
「問題の本質はもともとの資質にあるのでは
なく、警察官の心の持ちようにある」
(別の大阪府警幹部)という指摘もある。
犯人に立ち向かった女性巡査は愛知県立
高校を卒業後、県警に入った。
出身の中学校が荒れていたため、当時から
非行少年と交わる警察官の仕事に興味を持っ
ていたが、学生時代はテニス部とバスケット
ボール部に所属。
警察官にとって必須の柔道や剣道の経験は
なかった。
「親類の勧めもあって漠然と警察官になりた
いと思っていた」というのが本音。
熱意も体力も抜きんでていたわけではない
。
仕事への誇りや使命感は警察学校を卒業後、
万引や自転車盗などの細々とした事件処理と
市民の相談対応を続けるうちに自然に身に
ついたものだ。
巡査は
「制服を着ている分、一般の方の注目を集め
るのは当然。時には厳しいことも言われるけ
ど、犯人を捕まえたりして感謝されることに
はやりがいを感じる」
と話した上で、警察官のあるべき姿をこう語
った。
「当たり前の職務を当たり前にする積み重ね
が市民の信頼につながると思います」
最後の言葉を全警察官に贈りたいものです。
当たり前の事を当たり前にやれて当然。
警察官は、取り締まり、犯人捜査のプロで
あるべきで、プロで有る限り、当たり前の
事を当たり前に出来て当然の事です。
この女性警官の様にしっかりした意識を
持つ人材が増える事を願うばかりです。
↧
鼻折られ、血まみれでも連続猥褻犯を取り押さえた22歳スリム女性巡査が恥じる“過去”
↧